読書

備忘

安念潤司「国家vs市場」『ジュリスト』1334号82〜93頁 面白い論文だ。『ジュリスト』の「日本国憲法60年」特集の論考。著者は憲法学者。なお、同じく憲法学者の長谷部恭男教授は、著者を称して「あまり憲法の論文を書かないんだけど、書いたもの…

今年の3冊

今年読んだ本のなかから印象に残った本を3冊選びたい。 読書というのは関係の産物なのだから、読者の状況によってその印象は大きく変わる。選んだ3冊は、どれも私自身の状況がその本を読むのによい状況だった気がする。どんなによい本だといわれていても、…

読了

米原万里『必殺小咄のテクニック』集英社新書(2005) ISBN:4087203239 著者はエッセイストでもあるロシア語通訳。今年5月に逝去されたので、生前に出版された最後の書籍がこの本ということになる。本書のあとがきの重さは現実になってしまった。 さて…

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原武史『鉄道ひとつばなし』講談社現代新書(2003) ISBN:4061496808 著者は日本政治思想史を専門とする学者。『可視化された帝国』はかつて本屋でチェックしたまままだ買ってない。『大正天皇』は読もうと思ったまま長く積読状態になっている。先にこち…

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鄭大均『在日韓国人の終焉』文春新書(2001) ISBN:4166601687 著者の主張は、特別永住者たる在日韓国人は日本国籍を取得することでアイデンティティと帰属とのずれを解消すべきである、というものだ。多くの在日韓国人は日本人と変わらない生活をしてお…

再読

星野英一『民法のすすめ』岩波新書(1998) ISBN:4004305365 以前から読み直そうと思っていたのだが、後回しになっていた。直接のきっかけは大村敦志『民法総論』13ページの末尾、「本書は、ある意味では、同書〔星野『民法のすすめ』〕の私注であると…

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仰木彬・二宮清純『人を見つけ人を伸ばす』光文社(2002) ISBN:4334007414 今は亡き仰木彬のオリックスブルーウェーブ監督退任(2001年)後の本。その後、近鉄バファローズ・オリックスブルーウェーブの合併による新球団オリックスバファローズの監…

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鴻上尚史『俳優になりたいあなたへ』ちくまプリマー新書(2006) ISBN:4480687351 プリマー新書を読むのははじめてだ。たぶん、中高生向けを意図した新書なのだろう。ちくま新書の突っ走るすばらしき独自路線は(ときにおかしな方向に転げ落ちるものの)…

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長谷部恭男・杉田敦『これが憲法だ!』朝日新書(2006) ISBN:4022731141 朝日新聞社が新書を創刊するという。いまさら何で新書に参入するのだろうと首をかしげていたら、実際、創刊時の10冊には少し落胆した。朝日新聞社出版局の方針は「雑誌のような…

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広瀬弘忠『人はなぜ逃げおくれるのか』集英社新書(2004)ISBN:4087202283 数日前に紹介してしまったので、早速全部読むことにした。副題は「災害の心理学」。 集英社新書らしい一冊だと思う。ある分野の紹介に徹する姿勢は新書としてのぞましいとは思う…

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能登路雅子『ディズニーランドという聖地』岩波新書(1990) ISBN:4004301327 もう15年以上前に書かれたディズニーランド論。著者は東京ディズニーランド・プロジェクトに嘱託社員として参加した経験もある文化人類学者。なお、本書で扱われるディズニ…

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ジャン=ピエール・ボー(野上博義訳)『盗まれた手の事件』法政大学出版局りぶらりあ選書(2004) ISBN:4588022237 副題は「肉体の法制史」。西洋法制史の専門書である。訳者も指摘しているとおり、「本書はフランスの現状に対する具体的な提言を含んだ…

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森田朗『会議の政治学』慈学社出版(2006) ISBN:4903425096 「本書は、そもそもは退屈でフラストレーションの溜まる会議の最中に、会議の退屈な理由と運営の効率化の方法について考え、作成したメモが出発点である」。退屈な会議は誰でも経験があろう。…

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筒井康隆『ベティ・ブープ伝』中公文庫(1992) ISBN:4122019524 副題は「女優としての象徴 象徴としての女優」。ひっくり返して2つ並べたところが面白い。ベティ・ブープはアニメーションのキャラクターたる女優なのだから、女優でもあり、象徴でもあ…

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花見薫『天皇の鷹匠』草思社(2002) ISBN:4794211783 著者は諏訪流第16代鷹師であり、宮内省の鷹匠。 「人鷹一体」という言葉が印象深い。鷹と鷹匠とが心を通じ合わせなければならないという。鷹は単なる狩りの道具ではなく、鷹匠にとってはパートナ…

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河合香織『セックスボランティア』新潮社(2004) ISBN:4104690015 戸惑わせる題名である。セックスとボランティアは相容れないものなのではないか、そんな気がした。だからこそ、どうしても読みたくなった。 「障害者の性」というタブーに挑んだ良質の…

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苅谷剛彦『なぜ教育論争は不毛なのか』中公新書ラクレ(2003) ISBN:4121500881 題名に偽りあり。題名を問いにしたからには、どこかで仮説を用意すべきであろう。しかし、そもそも、本書では題名のような問いをたててはいないのだ。なぜこのような題名に…

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宮崎市定『科挙』中公新書(1963) ISBN:4121000153 今はなき中国史家の古典的名著。今は中公文庫にも入っている。 隋代に始まり、清末まで続いた科挙。明代には学校制度と科挙が併用され、清朝では試験の上に試験を重ねる結果となってしまい、弊害ばか…

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大村敦志『民法総論』岩波書店(2001) ISBN:4000260308 岩波テキストブックスの1冊であるが、あまりテキストブックという感じがしない。法律学ときいて一般に想像されるような類の本ではないからであろう。法律の解釈や適用ではなく、民法典自体から一…

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川島武宜『日本社会の家族的構成』岩波現代文庫(2000) ISBN:400600012X 学生書房、日本評論社から出版されていた同題名の書籍に論文1つを加えた新編集版。もともとの4本は1946〜48年に書かれたもの、追加の1本も1955年のものである。それ…

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有田正光・石村多門『ウンコに学べ!』ちくま新書(2001) ISBN:4480059164 変な題名である。だが、適切な題名だ。本書の内容を一言で言えば、たしかにそうなる。 前半が比較的科学的見地から、後半は比較的倫理学的見地が強い。5章構成だが、第1章は…

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末広陽子『私はチョウザメが食べたかった。』河出書房新社(2003) ISBN:4309905455 父のアメリカ旅行の土産話、「チョウザメのステーキがいちばん旨かった!」、この言葉からチョウザメに関心をもった著者のチョウザメエッセイ。内容は、前半が「国際ス…

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市川伸一『考えることの科学』中公新書(1997) ISBN:412101345X 「本書は三部から成っている。1部は論理的推論、2部は確率的推論、そして3部は、広く日常場面における推論を扱っている」。それぞれが3章構造になっていて、バランスもよい。何よりわ…

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谷岡一郎『ギャンブルフィーヴァー』中公新書(1996) ISBN:4121013255 副題は「依存症と合法化論争」。基本的にこの2つが本書のテーマだが、後者は合法化論争というよりは、ギャンブルの社会的必要性と娯楽としての可能性を論じていると言った方が適切…

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松井浩『打撃の神髄 榎本喜八伝』講談社(2005) ISBN:4062129078 「この物語は、一途に野球を愛し、一心不乱にバットを振り続けた榎本喜八という野球人の、火花の散るがごとく激烈な一代記である」。 彼に必要だったのは、理解ある指導者だったのかもし…

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小野耕世『ドナルド・ダックの世界像』中公新書(1983) ISBN:4121707109 あまりディズニーには詳しくないのだが、ドナルド・ダックを扱った本としてはたぶん最も有名。著者の経験、紹介、分析が入り混じっている。経験をもとにした紹介が中心なのだろう…

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竹内洋『丸山眞男の時代』中公新書(2005) ISBN:4121018206 「丸山の言説を個人のものとして分析する(せまい意味での)思想研究ではなく、戦後の大衆インテリの世界の中で丸山の言説を読み解く知識社会学あるいは社会史的アプローチによって戦後日本論…

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森毅『数学受験術指南』中公新書(1981) ISBN:4121006070 題名を信じてはいけない。まず、本書は「数学」のみにあてはまることを論じているのではない。著者が数学者だから、数学の例が多いだけである。本書は受験とは何かについて考える絶好の材料であ…

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日高敏隆・竹内久美子『もっとウソを!』文春文庫(2000) ISBN:4167270064 師弟対談。裏表紙の内容紹介欄をみると、性の話ばかり語っているようにみえるが、本対談の中心は「科学とは何か?」である。第1章・第2章は性の話中心になっているが、これは…

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玉村豊男『私のワイン畑』中公文庫(1999) ISBN:4122033527 著者が長野県の東部町に引越し、そこでブドウ畑をつくり、ワインをつくるまでをまとめた随筆。農業の魅力と、夢への挑戦にあふれた一冊。 農業の魅力はやはり生きている実感なのだろうか。「…