読了

玉村豊男『私のワイン畑』中公文庫(1999) ISBN:4122033527
著者が長野県の東部町に引越し、そこでブドウ畑をつくり、ワインをつくるまでをまとめた随筆。農業の魅力と、夢への挑戦にあふれた一冊。
農業の魅力はやはり生きている実感なのだろうか。「農業のよいところは、答えがひとつではないことだ」。与えられた自然の条件のなかで考え、それぞれのやり方で農業を営む。そのすべてが「答え」であり、そこに優劣はない。個性の世界だ。自分のやり方で畑を耕し、とれた作物で生活する。なんともすばらしいではないか。
単一の標準を設定する近代的な生き方からすれば、農業には人間的な魅力がある。近代人にとっての農業はもはや回顧的な存在なのかもしれない。大規模化し、標準化されてしまえば、もはや農業の魅力は半減してしまう。オーダーメイドで個性的な営みの人間性は、もはや「道楽」なのだろうか。
(追記)
2003年10月からワイナリーを開設したようだ。詳細は『花摘む人』のようだ。文庫化されたら読もうかな。