読了

川島武宜日本社会の家族的構成岩波現代文庫(2000) ISBN:400600012X
学生書房、日本評論社から出版されていた同題名の書籍に論文1つを加えた新編集版。もともとの4本は1946〜48年に書かれたもの、追加の1本も1955年のものである。それぞれに『川島武宜著作集』に寄せられた「著者解題」がついているのがたいへん便利。
特に最初の論文は主張が前面に出ているが、後に収められた論文ほど実証的である。時期の問題だろうか。戦後の知識人階層の言説を見るうえでは前半の方が面白いのだが、民法学者である著者に着目すれば、後半の方が断然に面白い。法律学者が現実社会を念頭に置きながら議論するとはどういうことなのか、いろいろと考えさせられる。
ところで、家族的原理と民主主義原理が対立するという見解はなかなか面白い。現代の眼から見れば、特に最初の論文は失笑を買うかもしれない。しかし、当時の背景からすれば、知識人として言わねばならないという強い気持ちがあったのだろう。本文から垣間見られる強い意志には、丸山とはまた違った味がある。