読了

広瀬弘忠『人はなぜ逃げおくれるのか集英社新書(2004)ISBN:4087202283
数日前に紹介してしまったので、早速全部読むことにした。副題は「災害の心理学」。
集英社新書らしい一冊だと思う。ある分野の紹介に徹する姿勢は新書としてのぞましいとは思うが、集英社新書にもいろいろあるわけで、この共通性のなさがまた集英社新書らしい。正直、集英社新書の目指すものがよくわからない。
さて、本書だが、題名がずれている。題名どおりの内容はわずかしかない。前に紹介したプロローグだけだ。こういう題名のつけ方は、一時的な購買意欲はそそっても、読後に裏切られた印象をもたれてしまい、長期的には逆効果なのではないかという気がしてならない。アンケートでもとらないと実証は難しい気がするが、そういうデータはないものか。ともあれ、本書が「災害の心理学」をテーマにした面白い一冊であることは間違いない。内容が正統派なのに読みやすく、題名につられる人なら好奇心を持ってくれる面白さがあるので、『人は見た目が9割』のような、題名に対する極端な拒否反応を起こすことはないだろう。だが、拒否反応がないということは、この題名では店頭で購買意欲をそそるパワーが足りないということだろうか。それとも、宣伝の差か。
災害について考えるなら、とりあえず読んで損はない本だろう。こういう意味のある本こそ、本来は正しい題名をつけるべきなのだが。「人はなぜ逃げおくれるのか」は帯につけるべき文言だったと個人的には思えてならない。