読了

苅谷剛彦なぜ教育論争は不毛なのか中公新書ラクレ(2003) ISBN:4121500881
題名に偽りあり。題名を問いにしたからには、どこかで仮説を用意すべきであろう。しかし、そもそも、本書では題名のような問いをたててはいないのだ。なぜこのような題名になったのか、さっぱりわからない。
著者はあとがきで、「本書は、私にとって、教育の論じ方をテーマとしたものであると同時に、「学力低下」論争からの訣別の書でもある」と述べる。本書の副題である「学力論争を超えて」は後者の意をくんだ適切なものだと思うが、本書は教育論争の不毛さを直接論じたものでは決してない。「教育の論じ方」とか、「教育論争の先にあるもの」とか、もっと適切な題名があったはずだ。
題名と内容のちぐはぐさをさておけば、面白い内容ではある。第1部のインタビューを中心に、中央公論や新聞記事をまとめた第2部・第3部、そしてまとめたる終章の書き下ろし。構想は面白い。しかし、急造の感は否めない。特に第1部のインタビューはもう少し工夫もあったのではないか。年表の使い方、新聞記事の使い方、ともに不親切に思える。本書の骨格だけに、練磨不足が残念だ。