読了

岩田靖夫ヨーロッパ思想入門』岩波ジュニア新書(2003) ISBN:4005004415
岩波ジュニア新書で出版したことが惜しまれる。ジュニアと銘打たれたこの新書の想定読者は、たぶん高校生だろう。しかし、この本は高校生にだけ読まれるには惜しい。こんなに読みやすいヨーロッパ思想史の入門書を、私は知らない。
著者の試みは、ヨーロッパ思想の2つの礎石であるギリシア思想とヘブライの信仰とをとりあげ、ヨーロッパ思想の本質を語ることである。第1部でギリシア思想、第2部でヘブライの信仰をとりあげ、第3部でそれらの変奏曲たるヨーロッパ哲学の歩みを解説する。専門用語を羅列することなく、読みやすい文章で書かれた良書である。
ただ、第3部の解説が、いかなる意味でギリシアヘブライの変奏曲なのか、わかりにくいところもある。もちろん、思想をすべて2つの基調音に落とし込むのは乱暴であり、思想の解説としては不適格であろう。だが、ヨーロッパ思想の本質を語ろうとする本書の立場からすれば、あえて基調音を強調してもよいのではなかろうか。第1部・第2部と第3部との連関が深まれば、もっと面白い入門書になったかもしれない。