読了

R・ホワイティング(玉木正之訳)『和をもって日本となす(上下)』角川文庫(1992) ISBN:4042471013 ISBN:4042471021
野球をとおした日本文化論。もう15年以上前の本だが、今読んでも面白い。
この15年の間に、日本の野球が置かれる環境は大きく変わった。外国人枠はかつてと比べれば大いに緩和された。外国人監督も現在セパあわせて3人もいる。このなかには日本一に輝いた監督だっている。日本語を話す“ガイジン”落合博満はいまや中日ドラゴンズの監督であり、セリーグを制してもいる。米国のメジャーリーグで活躍する日本人もいまや1人ではなく、国別対抗戦WBCでは米国が1次リーグで敗れ、日本が優勝した。2年に1度開かれていた日米野球も、今年で幕をおろそうとしている。
このような環境変化にもかかわらず、本書は今でも読む価値がある。時代の変化にかかわらず、外国人選手に対する位置づけは今でもうなずける。文化の違いに戸惑う外国人、あくまで「助っ人」としての位置づけ、今でも本書の指摘は古くなっていない。
本書は日本の野球に対する根本的な考え方にさかのぼって分析をしている。その作業は、何年たっても本書の価値を維持させるのではないか。飛田穂洲という今では知らない人も多い野球人へ注目し、文化として日本の野球をとらえようとした視点、インタビューなどをこまめにおこなった実証性が、本書の価値を高めているのだろう。
「文庫版への訳者あとがき」によると、本書の反響はスポーツジャーナリズムにだけは及ばなかったようだ。それがとても残念だ。面白いスポーツジャーナリズムのために。