読了

大嶽秀夫『高度成長期の政治学東京大学出版会(1999) ISBN:4130301187
たいへん興味深く、ひきこまれて読んでしまった。これまでの経験からすると、著者の文章は私の感覚にあうようだ。
本書の対象は「日本政治に関する同時代的な政治分析の主要な業績」である。同時代的な評価と後の時代からの評価とは、異なることも多いだろう。実際、本書は「主要な」といいながら、同時代的な評価の決して高くない重要な業績を何件もとりあげている。いったい両者はどこが異なるのか。
学問的研究は当然に客観的になされることを一応の前提としているわけだが、人間が行う以上、そこには制約が伴う。その制約が、研究に限界をつくるとともに、逆に魅力を生み出してもいる。制約の作用・副作用の微妙なバランスを読み取ることが、後の時代からの評価ということになるのだろう。
それに対して同時代的な評価となると、制約による限界が見落とされがちなのかもしれない。特に時代的制約には当然気づくはずもない。そして、後の時代からの評価と違って、評価すること自体にも時代的な制約がつきとまうことになる。
学問における制約、特に時代的な制約とは結局なんなのだろう。また、ゆっくりと考えてみたい。