読了

新藤宗幸『技術官僚岩波新書(2002) ISBN:4004307740
日本の官僚制を分析対象に選ぶと、どうしてもいわゆるキャリア組事務官にばかり注目してしまう。たしかに、彼らが日本の行政において果たす役割は大きい。そのため、キャリア組事務官を分析すれば、日本の官僚制がわかった気になってしまう。
著者は、それでは不十分だと指摘、内部組織問題に注目し、技術官僚に着目する。先行研究の少ないなか、公共事業とHIV薬害事件をとりあげて、技術官僚の役割を紹介している。
著者の見解を一言でまとめるならば、省益維持のため、法制官僚と技術官僚とは相互に依存しているということになろう。著者は、技術官僚は個々の専門領域のスペシャリストではなく、技術の衣をまとった行政官にすぎない、という。現代において、学士・修士の技術官僚にスペシャリストを期待することは無理である。技術官僚といえども、それは技術の衣をまとった行政官であるという著者の視点は、当然のことでありながら、見逃されていたことではなかろうか。