読了

佐道明広『戦後政治と自衛隊吉川弘文館(2006) ISBN:4642056122
戦後日本の防衛をめぐる政治に関する格好の入門書。防衛政策に関して論じた書物は案外と少ない。(類書として、講談社現代新書植村秀樹『自衛隊は誰のものか』があるが、今は絶版のようだ。この本は題名と異なり、戦後日本の防衛政策の概観を試みたものである。)
外交政策に重点をおいて防衛政策をみると、安全保障政策全体をとらえて物事をみることになる。たとえば、もはや絶版だが田中明彦安全保障』は、そのような視点をもつ、戦後日本の防衛政策に関する名著である。本書は、全体の視点をあえてとらず、防衛政策に特化したところに、その良さがある。日本では、防衛・軍事は避けられる傾向が強い。そこにあえてスポットライトを浴びせ、戦後日本の防衛政策の歴史を概観した名著である。できることなら、視点の異なる田中『安全保障』をあわせて読みたいところだが、残念ながら絶版である。
しかし、いかんせん入門書、残念ながら、引用・参考文献の一覧がなく、注もない。それらを期待する読者は、おそらく、著者の『戦後日本の防衛と政治』を読む必要があるのだろう。