読了

渡邉文幸『指揮権発動信山社(2005) ISBN:4797224347
副題は、「造船疑獄と戦後検察の確立」。造船疑獄において指揮権発動を入れ知恵したのは一体誰だったのか。この問いを基盤に、戦後検察の確立期を描く。
共同通信の記者であった著者は、「ジャーナリズム的方法とアカデミズム的方法の融合をめざした」という。回顧録など一次資料を読み解いて鋭く分析していくことがアカデミズム的方法なのかもしれないが、本書の魅力はそのジャーナリズム的な基盤にあろう。アカデミズム的方法にこだわるのであれば、引用などをもっと明確にしてほしかった。
第1章で造船疑獄事件に関する概略を示し、第2章以下でさかのぼって分析をはじめ、謎を解いていく。造船疑獄を戦後政治史・検察史のなかに位置づけ、過去から未来への節目としてうまくスポットライトをあてた良書である。