読了

佐山和夫『野球とアンパン講談社現代新書(2003) ISBN:4061496662
本書の問いは、「なぜ日本では、投手の投球に対するカウント・コールが、今もストライク先行なのか」というものである。筆者が国際野球連盟に問い合わせたところ、ストライク先行のカウント・コールは日本のみらしい。その理由を探るのが本書の目的のはずである。それに対する筆者の仮説は、「野球の中の要ともいうべきカウント・コールを独自の日本式に改めることによって、野球反対派との軋轢を中和させた」というものである。だが、その論拠は残念ながら憶測の域を出るものではない。アンパンとの比較も牽強付会にすぎる。そもそも、なぜストライクを先行させることが日本的なのだろうか。この点に関する疑問が著者にはないようだ。そのため、和魂洋才ともいうべき一般論にすがった平板な論述になってしまった。
ともあれ、野球エッセイと思えば、なかなか面白い本である。それならば、はじめからエッセイとして書いた方がよかったのではないか。編集者の技量が問われる。