読了

萩尾望都イグアナの娘小学館文庫(2002) ISBN:4091913814
萩尾作品を読むのはこれでまだ4作目。1作目(『11人いる!』)・2作目(『トーマの心臓』)とすばらしい作品で、私の漫画観を根底から覆すほどの名作だった(3作目は小品なので、そうとはいいませんが)。またすばらしい作品に出会ってしまった。
個人的に思うところが大きかったのは、表題作「イグアナの娘」と「カタルシス」の2作品。読むタイミングも絶妙だった気がする。どんなによい本でも、読む側にそれを受け容れる体勢がなければ、良さがわかるはずもない。これほどのタイミングで良作に出会えたことは、読書人としての最大の喜びだ。
カタルシス」はストレートな作品で、私の視点にうまくフィットしたからこその賞賛にすぎない可能性もあるのだが、「イグアナの娘」への賞賛はたぶん多くの賛同を得られるだろう。非現実的な設定で、現実的な問題を描く。非現実的な設定だからこそ、実際の現実におけるおぞましさを表面上は消すことができる。にもかかわらず、そこに描かれる心理は現実を見事に射当てているのではないか。
ところで、昔、「イグアナの娘」というテレビドラマがあった気がするが、どんなドラマだったのだろう。これをドラマ化すれば、どうしても現実の嫌な部分が表に浮かび上がってしまうように思えてならない。見てないのでわからないが、成功したのだろうか。