反戦歌

2年前だかの紅白のトリはSMAP世界に一つだけの花」だった。イラク戦争に対する反戦歌としてとらえられていた。国民的イベントとされている紅白歌合戦のなかで、公共放送たるNHKの番組で、反戦のメッセージを添えて歌われたのは、ちょっと意外だった。
反戦かどうかはともかく、この歌詞が受け容れられたのは、その穏やかさにあるのだろう。競争が過度に意識された社会のなかで、「そうさ僕らも世界に一つだけの花/一人一人違う種を持つ/その花を咲かせることだけに/一生懸命になればいい」と言われると、なんとなくほっとする。自分は自分でありさえすればよい、ということが、社会の清涼剤になっているのだろう。
平等に競争しようと思えば、価値判断がどうしても必要になる。結果を説明するためには、何らかの基準を作らねばならない。基準を受け容れることではじめて、競争に参加できる。だが、基準を受け容れることは、「自分らしさ」を捨てることでもある。いわば、「型」と「個性」との相克だ。
世界に一つだけの花」は、「個性」への着目を歌う。社会の渦に飲まれそうなとき、この詞が人を救えるのかもしれない。「型」にはまることだけが生き方ではないことを教えてくれる。この歌は、現代社会に対する反戦歌なのかもしれない。