読了

小町文雄『サンクト・ペテルブルク』中公新書(2006) ISBN:412101832X
空港の本屋で見つけてしまい、機内で読了。
抽象的な都市に興味があるのなら別だが、具体的な都市について書かれた記述は、結局のところ実際に行ってみないとよくわかならいものも多い。だが、何の前提知識もないと、行ってもよくわからなかったりする。そこで必要となるのが観光案内である。本書は文章中心の観光案内といったら怒られるだろうか。
普通の観光案内と違うところは次の3点。第1に、写真が少ない。これは観光案内にとって致命的ともいえるが、逆に現地に行ったときの感動を奪わずに済むともいえる。ようは考え方の問題だ。
第2に、食事・買い物といった要素がない。本書は中公新書の1冊であり、観光のためだけにつくられた観光案内とは違うのだから当たり前といえば当たり前だが、観光旅行者にとっては致命的であろう。だが、それだけ都市自体に関する内容は充実しているということでもある。
第3に、章の整理の仕方である。観光案内というのはただ雑然と名所旧跡を並べているだけだが、本書はそれとは一線を画している。良質のガイドが案内してくれているような雰囲気を味わえる。とはいえ、まさか街を歩きながら本書を読むわけにもいかず(そんなことしてるとスリにあうのではないか)、帯に短しといったところか。