読了

石原千秋『評論入門のための高校入試国語』NHKブックス(2005) ISBN:4140910259
石原千秋『教養としての大学受験国語』ちくま新書(2000) ISBN:4480058532
著者のいわゆる入試国語五部作のうちの2冊。評論に関してはこの2冊がカバーしている。いつだったか、著者の『秘伝中学入試国語読解法』新潮選書(1999) ISBN:4106005603、科目としての「国語」に関して眼から鱗が落ちた。今回、受験産業に復帰するにあたり、従来とは異なり「国語」がメインとなったので、読んでみることにした。
両書とも、序章で読解の方法論が総論として述べられ、続く各章で問題を解きながらそれを実践していくというスタイルである。前半の章では解く過程を比較的丁寧に説明しているが、後半の章になると解く過程の解説はない。章が評論の扱うテーマごとの配列になっており、そのテーマの理解も重要な課題なので、二兎追うことはできなかったのだろう。テーマ理解よりも方法論に関心があったので、そのあたりはやや残念である。ただ、受験参考書として考えれば、方法論を追究してもあまり得るところはなく、さまざまなテーマを理解した方が役に立つだろうし、教養書として考えても同様のことが言えるのだから、著者の戦略は間違っていないのだろう。
個人的には著者の方法論には学ぶところが多かったが、受験参考書としてはどうだろうか。両書とも難易度は高く、それぞれ中学生・高校生が読みこなせるか疑問だ。高い読解力を持ち合わせながら「国語」と相性が合わない生徒ならば(以前感想を書いた小森陽一氏の学生時代とか)、きっとこの本を読みこなせるだろう。だが、多くの学生にはちょっと無理な気がする。「高校入試国語」は高校生になったら、「大学受験国語」は大学生になったら読むのがちょうどよいかもしれない。それぞれが扱う受験には役に立たないかもしれないが、次のステップに進むためのよい準備になると思う。
方法論としては、「高校入試国語」の方が詳しい。著者の入試国語に関するスタンスを理解するためには両方とも読むべきなのだが、1冊にしぼれば「高校入試国語」の方がよいだろう。