岩波新書の5月の新刊、冒頭に苅部直丸山眞男』があった。非常に興味深い。ちょうどこの本が出る頃には暇になっているはずなので、ゆっくり読むことができる。非常に期待している。
苅部教授は東京大学法学部で日本政治思想史を担当しているので、丸山の後継者ということになる。しかし、苅部教授と丸山とでは同じ政治思想史といっても、全く異なるのではなかろうか。思想史という分野とは全く縁遠いが素人の眼から見て、政治思想史という学問に対する観方、取り組み方が異なるような気がする。もちろん時代の差はあるだろうが、何かそれにとどまらないものがあるように思える。この差をこえて、苅部教授がどのように丸山を論ずるのか、非常に興味深い。
さらに、苅部教授の文章は大変に面白い。テーマが強くあらわれ、その展開に読者は魅了される。『光の領国 和辻哲郎創文社(1995)ISBN:4423730766皇国史観の代表者平泉澄を論じた「歴史家の夢」『年報近代日本研究』18巻(1996)所収がより面白い。因みに、御厨貴編『歴代首相物語』新書館(2003)ISBN:440325067X田中角栄三木武夫を執筆しているが、なかなかに面白い評伝である。特に子供むけの自伝から入る田中角栄は、不思議な評伝である。