右側通行論(その2)

うまくいかない理由としてまず思いつくのは、「ここでは右側通行」たる表示が誘導の役目をはたしていないということである。誘導するためには、少なくとも誰もが表示に気づかなければならないし、それを見て従おうと思わなければならない。気づかなければ、当然誘導できるはずもなく、従おうと思わせることができなければ、それに気づいたところで意味はない。
「ここでは右側通行」の表示は決して目立たないわけではない。しかし、人が多い状態では気づかない可能性も否定できない。人だらけの状態では余計な表示に目を配る余裕はないのだろうか。もしそうだとすれば、人が多い状態でこそ必要な秩序形成が、まさにその人の多さによって誘導できなくなってしまうことになろう。これが正しいのであれば、「ここでは右側通行」の表示は、残念ながら全くの無駄ということになろう。
とはいえ、駅が使える時間帯すべて人があふれているわけでもない。上の予測は、人が多いために誘導が機能しないというものである。だとすれば、人がそれほど多くないときには誘導できなければならない。しかし、そうだろうか。経験的にははなはだ疑わしい。昼間に使用しても、それほど守られているとは思えない。逆に人が少ないから、各自が秩序を必要としていないのかもしれない。もしそうだとすれば、この表示は人が多かろうが少なかろうが、いずれにしろ役に立たないのかもしれない。
(次回に続く)