原稿を書く仕事というのは、いつも締切直前に慌てることになる。これは原稿書きが向いていないのか、それとも原稿書きという仕事の宿命なのか。よく、前もってすればいいのに、といわれるが、そんなこと毎回自分自身が痛感することである。学習力がないだけといわれればそれまでだが、たぶんそこには別の意味がある。
「締切」というものの本質は「諦め」である。たとえ前もってやっていたとしても、どうせ締切が来るまで諦めることなどできない。締切直前に慌てるということは、それだけ真剣にその原稿に取り組んでいるということの証左なのである。諦められないからこそ、締切のギリギリまで粘り、悩み、考える。締切というものは、時間を区切ることによって、本質的には永遠に完成することのない原稿を、中途で投げ出すきっかけを与えるものなのである。
因みに、今日が締切の原稿は、いまだ諦めることができていない。どうしたものか。