読了

大山礼子『国会学入門(第2版)』三省堂(2003)ISBN:4385313989
刺激的な本である。私の国会観は大きくゆるがせられた。
日本の国会とアメリカ議会が同一に論じられないのは当然である。議院内閣制と大統領制では、議会の機能が異なるのは当然である。では、同じ議院内閣制の国であるイギリスはどうだろうか。私はこれまで、国会改革などの議論では、イギリス議会を念頭において考えてきた。ところが、著者いわく、イギリス議会は特殊なのだ。イギリスは内閣が議会のなかに存在する点で特殊である。このことは議会の議席配置をみれば一目瞭然である。著者によれば、日本の国会は、ヨーロッパ大陸型のもの、フランスやドイツの議会の方に制度的な親近性があるようだ。大陸型議院内閣制の議会は、変換型議会(アメリカ)とアリーナ型議会(イギリス)の中間に位置する。これは、私にとって、大いなる驚きであり、目から鱗が落ちたといえる。
以上が著者の議論の出発点である。スタートからぶん殴られた感じで、知的興奮のもとに読み続けられた。なかでも面白いのは第3章であろう。この章は法案審議についての議論だが、著者の見解を一言で言えば、「審議レベルのずれ」である。日本の立法過程とフランス・ドイツを比較すると、各段階の審議の場がずれていることになる。日本における与党審査は仏独では委員会審議でなされ、日本における委員会審議は政府対野党の議論が中心だが、仏独ではそれは本会議でなされている。つまり、日本の国会は本会議でなすべき審議の目的を見失っており、それが本会議を形骸化させたと結論付けられる。
この議論は非常に面白い。しかし、はたして実行可能だろうか。著者は首相公選論、議員立法万能論、党議拘束撤廃論を実行困難と評価するが、「審議レベルのずれ」を直すことも、同じくらい実行困難なのではないか。もちろん、仮に実行困難であっても、著者の議論が無意味になるわけではない。さまざまな立場の議論がなければ、実りある結果は生れない。