読了

鹿野政直『近代国家を構想した思想家たち』岩波ジュニア新書(2005) ISBN:400500508X
岩波ジュニア新書はいったい誰を読者として想定しているのだろう。本書を読んだ感じでは、高校生・大学教養課程であろうか。大学教養課程が対象だとすると、岩波新書の対象は誰だろう。新赤版以降の岩波新書は、大学教養課程で十分に読めるものも多いと記憶する。どうも境目が難しい。
これは、新書の性格の変化によるものなのだろう。かつての岩波新書は大家といわれるような人が書く印象があったが、新赤版以降、作者は若くなっている。中堅・若手が新書を書くようになった。それ自体、もちろん悪いことではないのだが、新書の位置づけが難しくなってきているということだろう。昔ながらの方向性を保って、その結果売れなければ、結局は消滅するしかないのだから、方向転換はある程度避けられない。とはいえ、である。
閑話休題、本書の感想である。思想家でみる近代日本史といった本であり、各思想家6ページで紹介している。思想家の選択は、宗教家である中山みき出口なおを選んだり、在米の歴史家朝河貫一を選んだりとなかなか面白い。しかし、いわゆる政治家がほとんどいないのはちょっと寂しい。大久保なり、伊藤なり、大隈なり、とりあげようと思えばとりあげられる人物もいそうであるが、思想家ではないということか。