読了

浜谷源蔵(椿弘次補訂)『貿易実務入門(補訂3版)』同文舘出版(2003)ISBN:4495674021
こういう教科書類は、これまで読書欄でコメントしてこなかったが、いろいろと気になったので少し書いてみる。
貿易実務には縁遠い生活を送っていたので、貿易実務の入門書にどれほどの需要があるのかよくわからない。そして類書がどれほどあるのかもよく知らない。「はしがき」にあたる「補訂版刊行に際して」によれば、「貿易実務を簡潔に述べた書物として、需要が衰えることがない」らしい。たしかに、簡潔にまとめた本であることは間違いない。
貿易実務だけあって、頻繁な改訂が必要らしく、初版(1985年)から数えてどうやら40版くらいになるようだ。これだけ改訂が多ければ、少々の校正ミスは仕方がないのかもしれない。しかし、本書は入門書である。できることなら、混乱を招きかねない誤字脱字は避けていただきたい。(個人的には、「箱詰(本箱Wooden Case;ボール箱Cartonなど)」(59頁)が面白かった。これは木箱の誤植だろう。)
次に、「補訂版刊行に際して」に注記してあることだが、行政官庁の表記が省庁再編後のものになっていないことが気になる。なかには同じページの中で、新旧両方の表記が混在しているものもあった(たとえば120頁)。せめて補訂したページについては、他の箇所も新表記に改めて欲しい。
それから、廃止された手続が本文ではいまだ残っており、脚注に「この報告書は廃止された」のように注記してあるだけのものが散見される(たとえば、52頁、125頁)。従来の手続を理解することが、貿易実務においてどれほど重要なのか、私には全くわからない。しかし、本書は入門書である。わかりやすさを第一に考えれば、廃止されたのならもはやこの部分は削除した方がわかりやすいのではなかろうか。少なくとも、現行の手続を理解するうえでは、この方式はわかりにくいと思われる。
また、さまざま資料が載っているが、その見方・読み方に関しての説明がない。個人的には、そういった点についても簡潔でよいので入門的な解説が欲しかった。やはり、実務を知らないものにとっては、読み方自体が検討がつかないこともあるからである。
細かいことではあるが、業界用語については、ふりかなをふってほしい。ふつうに音読みしてよいものかどうか、知らないものには判断がつきかねる。
いろいろと思うところを書いたが、いくらかは編集者の責任であり、いくらかは補訂という形式をとっているところからくる限界なのかもしれない。せっかく需要があるのだから、ぜひともよりよい入門書に改良を加えていってほしいものである。