読了

前田雅英『少年犯罪』東京大学出版会(2000) ISBN:4130332031
著者の主張を簡潔にまとめれば、少年犯罪の増加はデータの裏づけがあり、増加の原因は社会規範の喪失である、ということになろうか。
自由の拡大が結果として規範を失わせ、少年犯罪を増加させたという議論には、いろいろと考えさせられた。「自由の拡大」と「規範の喪失」は本来別個のことであるが、現実として両者が同義に解せられた可能性はたしかに否定できない面もあろう。自由と規範は両立するという当然の事実が見えなかったのは、自由とは何かということが当時(そして今でも)まじめに考えられていなかったからなのかもしれない。そして、「規範=悪」という単純な思考がはびこっていたのかもしれない。
ある団体の運営に関して、私は次のような体験をしたことがある。団体の規約に忠実たるべきだ、という主張をしたら、規約を持ち出しただけで、一部の人はどうやら不快に感じたらしい。結局、規約というものは、無意味に行動を縛りつける悪しきものであるという固定観念があったらしい。ある人にきくと、規範というものはイコールよくないものだという先入観があるといっていた。
もしこれが社会の常識だとすれば、「自由の拡大」とはすなわち「規範の破壊」であると考えられていた可能性は高い。そして、ひょっとすると今でもそうなのかもしれない。規範を重視する議論が「自由」を抑圧するきっかけとして使われないことを祈りたい。