読了

ロバート・B・チャルディーニ(社会行動研究会訳)『影響力の武器』誠信書房(1991) ISBN:4414302692
面白かった。邦訳の副題が内容をよく示している。「なぜ、人は動かされるのか」である。社会心理学というのがどのような分野なのか、私はよく知らない。もしこういう研究をやっているのだとすれば、なかなか面白い分野なのだろう。
キーワードは「カチッ・サー」である。「「カチッ」とボタンを押すとその場面に適したテープが動きだします。そして、「サー」とテープが回って一連の標準的な行動が現れるのです」。セールスか何かで、つい承諾してしまったことはないだろうか。何で承諾したのだろうかと、後悔したことはないだろうか。この承諾の際の心理メカニズムについての研究書である。
8章構成だが、各章とも「まとめ」と「設問」がついている。これが各章を咀嚼するのに便利だ。本文が敬体で書かれているのに対し、「まとめ」と「設問」は常体で書かれているのも、とても読みやすい。本文は語り口調なのに対し、「まとめ」は整理されたメモであり、「設問」は自分の頭で整理しなおすヒントなのである。
序章・終章である第1章と第8章を除いた6章は、それぞれテーマ別に原理と防衛法を説明している。原理だけでなく、防衛法まで説明しているところがありがたい。なお、6つの原理とは、返報性、コミットメントと一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性である。
社会心理学とは何か知らなくても十分に楽しめる。私がそうだ。さまざまな例が引かれているが、なかにはきっと自分の興味分野の例もあるだろう。そこを読むとき、まさに自分のフィールドとのつながりを感じた。人間について興味がある人には是非読んで欲しい。