何らかの改革をしようとすれば、当然何らかの論争が生まれる。単純化していえば、論争は守旧派と改革派の対立になる。絶対的に正しい結論はない、あるいは何が絶対的に正しい結論かはわからないという前提にたつならば、そこでの論争は、ようは利益確保のための対立になる。守旧派は既得権維持のために活動し、改革派は利権獲得のために躍動する。
しかし、世間でみられる改革において、利権は表面化しない。既得権維持や利権獲得を表に出せば、その利益にありつけない人々の賛成は得られない。利益を得る人の範囲が広ければ広いほど、基本的には個々の得る利益は少なくなるのだから、利益を表に出して支持者を増やすことは、原則として難しいといわざるをえない。
しかし、民主政治を前提にするのならば、支持者が多ければ多いほど有利であることは間違いない。では、どうやって支持者を増やせばよいか。そこで何らかの方法で自らの主張を正統化しなければならない。これが言説の力である。