夢というものは、結局のところ諦めきれないのかもしれない。新堂平吉が別れた奥さんに見栄を張ってしまう気持ちはよくわかる。そして、だからこそ普段は他人に干渉しないし、でも夢を諦めたベルボーイ只野憲二には干渉してしまうのだ。別れた奥さん堀田由美は、今頑張ってるのだから新堂が見栄を張って嘘をつくことはなかったという。しかし、新堂にとって、たぶんそれはできない相談だ。新堂にとって、それは見栄を張らざるを得ないほどの大きな夢だったのではないか。それが夢であるからこそ、別れた奥さんには夢を生き続けていることを見せたいのだ。普段他人に干渉しないのは、自らの外面を見せているだけで、別れた奥さんには、そんな外面ではなくて、夢というかつての内面を見せたかったのだろう。そして、かつての内面は、新堂のどこかに今も眠っているに違いない。