読了

藤子・F・不二雄ミノタウロスの皿(藤子・F・不二雄異色短編集1)』小学館文庫(1995) ISBN:4091920616
藤子・F・不二雄は「ドラえもん」のイメージが強すぎるが、こういう短編こそ面白い。
「劇画・オバQ」。15年ぶりにQちゃんが正ちゃんのもとを訪ねる。しかし、Qちゃんの居場所はもうない。大人になるというのはそういうことなのかもしれない。夢を失って大人になり、夢を追い続ける者は結局失敗するだけ。Qちゃんはコネでオバケ銀行に就職したのだろうか。
ミノタウロスの皿」。ヒトと牛とが逆転した星に漂着する。その星ではヒトは牛のペットであり、食用だ。漂着した地球人にとって、それは残虐にうつる。「彼等には相手の立場で物を考える能力が全く欠けている」ようにまでみえる。しかし、そういう彼も、むかえのロケットの中では「ステーキ」を食べている。そして、「ステーキ」を食べながら、牛に食べられるヒトを思って泣いている。「相手の立場で物を考える」とはどういうことなのだろうか。結局、そんなこと、誰にもできないのかもしれない。