選挙談義によせて

おそらく社民党を支持している方が、中選挙区の復活を望んでいた。いわく、2大政党制は国民に対立がある風土にあっているが、日本はそうではない、流されやすい国民性なのだから小選挙区はよくない、とのこと。
しかし、2大政党制の国は国民が対立しているのだろうか。といっても、2大政党の国なんて世界にほとんどない、というかイギリスとかつてのニュージーランド、それからアメリカくらいか(アメリカは3党制とか4党制とかいわれたりもしたはず)。国民が対立しているのかどうかはよくわからないが、少なくともイギリス労働党を見る限り、保守党と異なった政策をしているとは思えず、また対立を前提にしているとも思えない。そもそも、対立しているならば、国民の支持もそう簡単に変わらず、結果的に同一政党の長期政権になってしまいそうな気がする。
それから、仮に小選挙区がよくないとして、なぜ中選挙区制なのか。中選挙区制への批判が大きく、細川連立内閣が選挙制を変えて今の制度になったわけで、今がだめだからといって、単に元に戻すというのは、いかがなものかと。中選挙区制の問題点がまた出てくるだけのはず。中選挙区を主張するなら、かつての問題をどう克服するかを示さなければ、説得力がない。自民党が候補者を複数立てることになり、政策本位ではなく、人物本位の選挙になり、そのためお金がかかってしまう。
どうせ提案するなら、比例代表全国1区を主張すればいいのではないかと思う。比例代表ならば、小政党が生き残る可能性も高い。もちろん、政党濫立のおそれがあるので何らかの対策は必要だろう。
選挙制度といっても2段階で考える必要がある。1段階目は誰が投票するのか、という問題。いわゆる普通選挙の問題で、かつてはこれが大問題だった。日本でいえば、直接国税15円以上を納める25歳以上の男子から始まり、最終的には20歳以上の男女になるという歴史になる。
2段階目は票からどのように当選者を選ぶかという問題。これが選挙区の制度と密接にかかわる。それぞれの票が平等であることを純粋に貫くのであれば、票の分布(=国民の分布)と当選者の分布が等しくあるべきということになろう。それは比例代表である。比例代表ならば、票の分布がそのまま当選者の分布に反映される。因みに、小選挙区はこの間の乖離が最も激しい。とはいえ、この段階で平等をどれほど重視すべきなのかはよくわからない。1段階目の平等と2段階目の平等は質が違うのかもしれない。しかし、もし両者が同じものならば、比例代表が最も望ましいのではないか。
なお、もちろん比例代表にも問題点はあるわけで、平等云々だけで片付くほど簡単なわけもないが、小政党を支持するならば、こういうロジックがよいのではないかと思う。